こども病院の基本的役割
1.こども病院の基本的役割
現在の福岡市立こども病院は、小児高度3次医療(小児の高度で専門性の高い手術や診察・治療を行う医療)機関として日本有数の心臓外科手術の実績などとして全国にも誇れる機能を果たしてきました。岡山以西の西日本に1か所の小児専門病院であり、北海道などからも心臓手術にこられます。
また、そのこども病院は小児地域2次医療(小児の街の医院では診られない専門性の高い診断や手術を行う医療)施設として地域の開業医の先生方や患者さんたちの信頼を得てきました。
2.老朽化し狭隘な「現こども病院」
しかし、現状のこども病院は、現地を視察し、そこで働く医師や看護師さん等の医療関係者や患者さんたちの話しを聞くとすぐわかるのですが、開設後約30年を経過し、大変老朽化し手狭になっています。
狭いスペースに高度な医療機器が詰め込まれ、医療事故の危険性さえあり、安心してこどもの命を守る医療行為に支障をきたす恐れもあります。付き添いの患者の家族がベッドの下に寝るような療養環境や、男性の看護師の休憩室さえないような劣悪な医療現場の実態です。来訪者の駐車スペースが少ないことはもちろん、患者を運ぶ緊急車両や医療関係者の車の誘導、駐車にも不便をきたしています。早急なこども病院の建て替えの必要性は、市民、患者、医療関係者、行政、議会を通じて異論のないところです。
3.こどもの命と健康を守る「新こども病院」の決定
(1)こども病院の基本的役割から
こども病院は、小児高度3次医療機関と小児地域2次医療施設の両方の役割を担っています。小児高度3次医療を担う全国の「こども病院」は、都心部から少々離れてもゆったりとした敷地に良好な医療現場、療育環境を形成し、優秀な医師を確保して高度な医療水準を保障しようとしています。そして、優秀な医師のもとに多くの若い意欲のある医師や看護師など医療従事者が集まり経営的にも良い影響を与えています。
福岡のこども病院が今までの役割を維持し、機能を強化するためには、高度な医療を担える優秀な医師の確保が第一義です。そのための器となる良好な医療現場や療育環境の整備は不可欠な要素です。【参照 表1】
(2)子どもの命を第一に考え移転場所の決定
現在のこども病院に対する患者さんや開業医の先生方の思いを大切に、現実的な選択肢として移転場所の候補地を現在地に近い市内中心部を含め具体的に検討、検証してきました。
現在地は、敷地の形状が不整形なうえ面積が16,794㎡しかありません。現状でも手狭な上、医療行為を継続しながらの建て替えは長期にわたり患者や医療関係者に苦痛や不便を強いるだけでなく、完成後も敷地の活用やレイアウトに制約が生じ、医療機能の水準の維持に強い懸念があります。また、現地での建て替えがローリング方式を採用するため更地での建設より工事費が増加することは間違いありません。その増加額の試算の過程で行政の行為に対し不必要な疑念を抱かれている点は残念ですが、それだけが決定的要素ではありません。なによりも、現行のこども病院の機能を維持し、周産期医療などの最近の市民の医療ニーズに応えるための機能強化には、現地の建て替えは困難だと判断しました。
② 九大六本松キャンパス跡地(中央区六本松)<図>
地下鉄等交通のアクセスからすると、九大の六本松跡地が一見魅力的ですが、患者の搬送や医療関係車の出入りの点からすると駐車場の敷地の確保や周辺道路とのアクセス、渋滞の状況がより重要です。当該敷地は、九大の大学移転との関連で、奥の南側約半分は裁判所への用途利用が決定しています。地下鉄に接面する北側部分は、地価が高く(40万円/㎡)、新病院構想の規模を前提にすると土地購入費だけで120億円の購入費が必要で新病院の後年度負担に重くのしかかり健全な病院経営がなりたつ限度を超えています。また、市民が広く集う施設を望む地元住民の方々との街づくりのコンセプトからの長期にわたる調整と時間が必要になります。
比較的土地単価が安く(購入価格127千円/㎡)、ゆったりした敷地を確保でき良好な医療現場や療養環境の形成の可能なアイランドシティがこども病院の基本的役割を維持し充実発展(小児高度3次医療、周産期医療)させるための適地であると判断しました。また、小児地域2次医療を担うこども病院の役割としては、本市の中心部から空白区の東区に移転することにより、全市的に見て小児地域2次医療の地域バランスを改善し、医療機能の充実を果たすことになります。この移転先の決定は、先入観なしに全市的観点から今後30年間の全市のこどもの命と健康を守る視点から判断したものです。【参照 図1】
4.小児救急医療と周産期母子医療の充実
現こども病院が担っている小児救急医療体制は、小児2次救急医療(入院治療を必要とする重症の小児救急医療)です。新病院では、内科的な小児3次救急医療(生命の危機に関わる疾患や複数の診療科領域にわたる治療が必要な重篤な疾患に対応する)体制の充実をはかることになっています。また、新病院では、周産期母子医療センター(母体・胎児集中治療管理室MFICUや産科病棟と新生児集中治療管理室NICUを含む新生児病棟を備え搬送受け入れ体制が整備された病院、)の機能を加えハイリスク分娩(母体又は胎児・新生児におけるリスクの高い分娩)に対応します。
更に、ドクターカー(医師と新生児の集中治療器を搭載した救急車)を配置することができれば、医療行為の母子の危険性を分散させることにより、他都市で報道されているような妊娠中の母子の診療拒否のたらい回しでの悲劇を防げます。新病院に小児3次救急医療体制と周産期母子医療センター機能そしてドクターカーが整備されると福岡市全域での救命救急率は上昇し母子の生命と健康を今以上に守れます。